土手の小さなサラダバー

季節と散歩

春の散歩道で

今は桜が満開の時期。
けれど春は、桜だけではない。

散歩をしていると、
あちらこちらで花が咲き、心がふっと軽くなる。

近くの土手では、桜より少し早く、
ハマダイコンの花が一面に広がっていた。

やわらかな紫色が風に揺れて、
いかにも春らしい景色だ。


このハマダイコン、
実はこのあたりの散歩犬たちに大人気である。

柔らかい茎や葉っぱをかじったり、
小さな大根のような根っこをガリガリ噛んだり。

どうやら、とてもおいしいらしい。

うちの犬も、瑞々しい茎を見つけると、
その場でしばらく動かない。

まるでセルフサラダバーのようだ。


この土手には、ハマダイコンのほかにも、
菜の花やクコ、くるみ、菊芋、蓬など、
食べられる野草がいくつも自生している。

犬だけでなく、野草を摘みながら歩く人の姿も見かける。

以前、インド系の方が摘んでいた葉っぱは、
見た目にはとても地味で、正直覚えられなかったのだが、
「国では八百屋で売っている野菜ですよ」と教えてくれた。

同じ植物でも、場所が変わると見え方も変わるのが面白い。


ところで、このハマダイコン。

もともとは畑で育てられていた大根が、
海辺などに広がり、野生化したものだと言われている。

そのため、根は細くて硬く、
私たちが食べる大根のようにはならないが、
葉や花には、どこか親しみのある気配が残っている。


一面に広がる、やさしい紫の花。
その中で夢中になって葉をかじる犬。

そんな何気ない春の風景に、
今年もまた、季節の訪れを感じている。


今日のWord Note

咲き乱れる(さきみだれる/saki-midareru)

意味: 花が一面にたくさん咲くこと

英語では in full bloom / blooming everywhere


「咲き乱れる」という言葉には、
整いすぎない自然の豊かさが感じられる。

少し自由で、少しにぎやかで、
それでもどこかやさしい春の景色に、よく似合う言葉だ。


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