理屈とことばのあいだで

読書

『探偵ガリレオ』を読み終えて

探偵ガリレオを読み終えた。

東野圭吾の作品といえば、私の中では
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』や『クスノキの番人』のように、
どこかノスタルジックで温かいファンタジーが思い浮かぶ。

けれど、この『探偵ガリレオ』は、少し違う顔を見せてくれた。


この作品は、天才物理学者・湯川学、通称「ガリレオ」と、
大学時代の同級生である刑事・草薙が、不可解な事件の謎に挑む連作短編集だ。

扱われるのは、一見すると「超常現象」のような出来事ばかり。
突然燃え上がる人体、触れていないのに作動する機械、説明のつかない現象——

けれど、そのひとつひとつが、ガリレオの冷静な観察と論理によって、
少しずつ「科学」で解き明かされていく。

ミステリーでありながら、むごたらしい描写や過度なサスペンスは少なく、
理屈が静かに積み重なっていく読書体験だった。

そして何より、ガリレオと草薙の軽妙なやり取りが心地よい。
どこか距離のある友情のようでいて、信頼が感じられる。
その空気が、物語全体をやわらかくしている。

「チキンな私でも楽しめた」というのが、正直な感想だ。


この作品は、ドラマや映画にもなっているので、
タイトルだけは以前から知っていた。

けれど実際に読んでみると、印象に残ったのは、物語だけではなかった。


この本には、五つの事件が収められている。

それぞれのタイトルが、とても印象的なのだ。

  • 燃える(もえる)
  • 転写る(うつる)
  • 壊死る(くさる)
  • 爆ぜる(はぜる)
  • 離脱る(ぬける)

すべて「三文字+る」で統一され、
さらにひらがなの読みが添えられている。

「燃える」「爆ぜる」は見慣れた言葉だが、
「転写る」「壊死る」「離脱る」は、普段はあまり使わない。

少し違和感があり、でもどこか怖くて美しい。

言葉が、ほんの少しだけ「ずらされて」いるような感覚。

そんな細部に、著者のこだわりを感じた。


物語は理屈で進んでいくのに、
言葉はどこか詩的で、遊び心がある。

理屈とことばのあいだに、
この作品の静かな魅力があるのかもしれない。


今日のWord Note

「爆ぜる(はぜる)」

意味:
内側から勢いよく裂ける・はじけること

英語では:
burst / crack open / pop


「爆ぜる」は、ただ壊れるのではなく、
内側にあったものが外に出る瞬間を感じさせる言葉だ。

火の中の小さな音や、
抑えていた感情がふっとあふれる瞬間。

そんな、目には見えない動きを、
そっとすくい上げてくれる。


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