幸せは、神様と分かち合うもの|

物語とことば

『お稲荷さまの謎解き帖』を読んで

最近、朝水想さんの『お稲荷さまの謎解き帖』を読み終えました。

物語の主人公は、まだ修行中の「やわ神」である稲荷神。
大神様に命じられ、人間の願いをかなえるために地上で奮闘する――そんな少し不思議で、どこか人間くさい物語です。

浅葉なつさんの『神様の御用人』シリーズを彷彿とさせますが、神様の視点から描かれる人間の姿が新鮮で、弁財天や竜神、神の使いである狐や白蛇など、日本人には馴染み深い八百万(やおよろず)の神々が生き生きと登場します。

読み進めるうちに、日本人が抱く「神様」の独特な距離感について考えさせられました。

一神教の絶対的な存在とは違い、日本の神様はあらゆる場所に宿る「自然そのもの」に近い存在です。
山にも、川にも、木にも、風にも、何かが宿っている。見守るようにそこにいて、人間の願いとともに生きている。

作中の竜神が「人間に忘れ去られ、荒魂(あらみたま)になってしまった」と語るシーンが印象的でした。

神様が人の願いを叶えることで力を得て、穏やかな和魂(にぎみたま)に戻る。
人間に神が必要なように、神様もまた、人間の祈りや幸せを糧に生きている。
そんな「支え合い」の思想は、私たちが自然を敬う気持ちの根源にあるような気がします。

物語には、心に留めておきたい美しい言葉も溢れていました。

「気に入ったものを数えてみたら、毎日がもっと楽しくなる」

余命いくばくもない女性・サヨコが遺したこの言葉は、日常の小さな光を見つける大切さを教えてくれます。

また、稲荷神が初めて経験した「さみしい」という感情を、「何かが自分から零れて穴が開くような気持ち」と表現した一節には、言葉にならない胸の痛みが重なりました。

秋の気配を感じさせるキンモクセイの香りと、一瞬で消えるからこそ「希望の灯り」として心に残り続ける花火。
言葉も、願いも、そうなのかもしれません。


今日のWord Note

願い(ねがい / Negai)
wish / hope / heartfelt desire

願いは、ただ「ほしいもの」ではなく、
心の奥にある祈りのようなもの。

日本語には、そんな静かな温度を持つ言葉がたくさんあります。


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