町中で会話している女子高生の声が耳に入ってくると、ほぼ例外なく自分のことを「うち」と言っている。
「うちさ、昨日さ…」という調子だ。
「わたし」は、どうやら先生やアルバイト先の上司など、年長者と話すときにしか登場しないらしい。
そういえば「うち」って、もともとは方言だったのでは? と気になって少し調べてみた。
「うち」のルーツ
「うち」は漢字で書けば「内」。
もともとは「内側」「自分の家」「自分の身内」を指す言葉だ。
関西地方では古くから女性の一人称として「うち」が使われてきた。
京都や大阪では特に一般的で、やわらかく親しみのある響きを持つ言葉として定着していた。
それが1990年代以降、テレビやバラエティ番組、関西出身タレントの影響などを通して全国区に広がったと言われている。
2000年代に入ると、若者言葉として首都圏の女子中高生の間にも浸透していった。
もともと「内=自分の側」という意味を持っているので、「自分」を指す言葉に転じたのは、ある意味とても自然な流れなのかもしれない。
日本語は「自分」を固定しない
考えてみれば、日本語は一人称のバリエーションがとても多い。
わたし
ぼく
おれ
あたし
うち
さらに面白いのは、相手によって一人称を変えること。
子どもに対しては「ママはね…」
学生に対しては「先生は…」
ビジネスでは「私どもは…」
自分そのものは変わらないのに、呼び名は変わる。
そこには、「相手の目線に合わせる」という日本語の特徴が表れているように思う。
自分をどう呼ぶかは、相手との関係性の中で決まるのだ。
他の言語では?
英語の一人称は基本的に I だけで、ほとんど変化しない。
しかし、タイ語やインドネシア語などには、日本語と同じように複数の一人称があり、性別や親しさ、上下関係によって使い分ける文化があるらしい。
たとえばタイ語では、
男性は phom、女性は chan を使うのが一般的だが、場面によっては別の語を選ぶこともある。
言語が違えば、「自分」の表し方もずいぶん違う。
女子高生の「うち」を聞きながら、
言葉は時代とともに変わるけれど、
「相手との距離を測りながら自分を置く」という日本語の本質は、案外変わっていないのかもしれない、と思った。
今日もまた、新しい「一人称」がどこかで生まれているのだろうか。
今日のひとこと英会話
It depends on who I’m talking to.
(誰と話しているかによります。)
一人称の使い分けの話題にぴったりの一言。
言葉は、相手との関係の中で形を変えるものなのだ。ツール


コメント