大人のための当て字講座

Beautiful Japanese Words

読めたらちょっと自慢したくなる漢字の世界

「チョコレートは “貯古齢糖” と書くんですよ」

先日、漢字好きの留学生に教えてもらったら、当て字が気になってしかたありません。

当て字とは、音や意味を借りて外国語や新しい言葉を漢字で表したもの。
文明開化のころ、人々はカタカナが今ほど一般的ではなかった時代に、知恵を絞って外来語を書き表しました。

今日は、そんな当て字の世界を
「知っていそうで知らない」
「見たら納得」
「思わず笑ってしまう」

の3カテゴリーでご紹介します。

さあ、大人の知的遊びの時間です。


① 知っていそうで知らない当て字

書けそうで書けない。
でも知ったら「へえ」と言いたくなる漢字たち。

  • 珈琲(コーヒー)
  • 煙草(タバコ)
  • 麺麭(パン)
  • 倶楽部(クラブ)
  • 硝子(ガラス)

どれも一度は見たことがあるはずなのに、
いざ読むとなると少し戸惑う。

少し難しいのは「麺麭」。
“麺”に、小麦粉で作った「粉もち」や「だんご」を意味する漢字“麭”を合わせたもの。
小麦で作る食べ物、という意味も感じられます。

畠中恵さんの時代小説にも登場していました。
江戸や明治の空気と、当て字はとても相性がいいのです。


② 見たら納得の当て字

音だけでなく、意味まで絶妙に表している秀逸な例。

  • 麦酒(ビール)
  • 洋琴(ピアノ)
  • 自鳴琴(オルガン)
  • 写真機(カメラ)
  • 電話(テレフォン)

とくに「麦酒」は美しい。
“麦からできた酒”――説明いらずです。

「洋琴」もいいですね。
西洋の琴。
たしかにピアノは、大きな“琴”のようにも見えます。

こうして見ると、日本人は単に音を写したのではなく、
“意味をどう漢字に託すか”を真剣に考えていたことがわかります。


③ 思わず笑ってしまう当て字

さて、ここからは少し肩の力を抜いて。

  • 貯古齢糖(チョコレート)
  • 加加阿(ココア)
  • 安母尼亜(アンモニア)
  • 沃度丁幾(オートミール)
  • 波斯(ペルシャ)

特に「貯古齢糖」。

「古いものを貯めて、年齢を重ねた糖」
……意味は深読みしないことにしましょう。

音を必死に追いかけた結果、
こんなにも堂々たる四字熟語のような姿になった。

この“無理やり感”こそ、当て字の魅力です。


当て字は、日本語の応用力の証

そもそも漢字は、中国から渡ってきた文字。
それを日本語の発音に合わせ、意味を広げ、ときに音だけ借りて使う。

万葉仮名も同じ発想です。

つまり日本語は、はじめから“借りて、工夫して、使いこなす”言語だったのです。

外来語をカタカナで書く今の私たちも、
実はその延長線上にいるのかもしれません。


あなたなら、どう書きますか?

スマートフォン。
アイスクリーム。
コンピューター。

もし漢字で書くとしたら?

少し考えるだけで、
日本語がぐっと立体的に見えてきます。

次のカフェタイム、
珈琲を飲みながら、ちょっと当て字で遊んでみませんか。


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